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最高裁判所第三小法廷 昭和34年(オ)326号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人佐藤達夫、同佐藤和夫の上告理由一について。

所論は、土地区画整理施行者である仙台市長の措置を非難し、上告人が被上告人との間の賃借権に基き本件土地中上告人の占有する部分につき使用権を有することを主張するに帰する。土地区画整理法施行法第五条、土地区画整理法第九九条第三項によれば、特別都市計画法に基いて施行され、土地区画整理法施行後も続行されている区画整理事業において、特定の土地が仮換地として指定された場合は、その土地を権原に基き使用し、又は収益することができた者は、当該仮換地を使用し、又は収益することができないものであるところ、被上告人等が上告人に対し明渡を求めている本件土地(原判決見取図(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)(ト)(ロ)を順次に結ぶ線内の土地)については、既に仮換地指定がなされたこと原判決の認定するところであるから、上告人は、本件土地について賃借権を有しても、右仮換地指定処分の効果として、これを使用する権限がなくなつたものといわなければならない。もつとも、上告人が、仮換地前の土地の一部について賃借権を有しているというのであるから、施行者より本件土地を仮に右賃借権の目的とする旨の指定を受けたときは、この限りでないが、その指定を受けた旨の主張がなく、従つて、また、原審においてその事実の存在が認定されていない本件においては、この点を顧慮すべき限りでない。上告人が区画整理施行者である仙台市長に対し、特別都市計画法施行令第四五条により、仙台市北目町一九番の土地百坪を被上告人林栄一より賃借している旨の届出をなしたことは原判決の認めるところであるが、本件土地は、それと地番を異にする同町二〇番の一宅地七七坪六合二勺、同二一番の一宅地三二坪八合に対する換地予定地として指定されたものであることが原判決の認定するところであるから、右賃借権の届出を根拠として区画整理施行者の懈怠を非難し、上告人の主張を正当づけようとする上告人の論旨は採るを得ない。

同二について。

所論は、違憲をいうが、所論の居住権および生活権は、上告人が本件土地に居住する権原があることを前提とするものであるところ、原判決は上告人のその権原の存在を否定しているのであるから、論旨は前提を欠く、よつて、論旨は採用できない。

同三について。

所論は、将来土地区画整理施行者である仙台市長により本件仮換地につき上告人のため仮に賃借権の目的となる土地の指定があることが予想されるのに、あえて上告人に対し本件土地の明渡を要求するのは、徒らに上告人の営業権を侵害するものであるから、権利の濫用であるというに帰するが、論旨は、原審で主張しない事実を前提とするものであるから、上告適法の理由とはならない。よつて、採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 高橋潔 裁判官 石坂修一)

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